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文化との出会い

夏祭りの夜、金魚すくいで負け続けた

2026年2月12日 4分で読める

浴衣の帯が結べなくて、YouTubeを3回見直した。

動画では簡単そうに見えた。右を上にして、ぐるっと回して、蝶結び。でも実際にやってみると、鏡越しの動作は左右が逆になって、3回目でようやく形になった。形になった、と思ったのは自分だけで、家を出て5分後に帯がゆるんできた。結局コンビニの駐車場で結び直した。

夏祭りに浴衣で行くのは初めてだった。普段着で行っても構わないが、渡辺さんに「浴衣で行ったほうがいいわよ、雰囲気が出るから」と言われて、去年買ったまま着ていなかった紺色の浴衣を引っ張り出した。下駄も履いた。歩きにくい。でも、カランコロンという音が、祭りに向かっている実感を足元から伝えてくれた。

屋台の列

会場に着いたのは午後5時過ぎだった。もう人がたくさんいた。提灯の灯りがオレンジ色に光っていて、その光が浴衣の柄に反射している。焼きそばの匂い、たこ焼きの匂い、りんご飴の甘い匂い。これらが全部混ざって、夏祭り特有の空気を作っている。

まず焼きそばを買った。鉄板で焼いている音がじゅうじゅう聞こえて、その音だけでもう美味しい。ソースの匂いが煙と一緒に上がってきて、受け取ったパックは手で持てないくらい熱かった。割り箸で食べる。キャベツがしなしなで、麺は少し焦げている。でもこの焼きそばは、ここでしか食べられない味がした。フードコートの焼きそばとは別の食べ物だ。

屋台の列に並んでいる時間が、祭りの本体だと思った。前に並んでいる家族の子どもが風船を持っている。後ろのカップルは何を食べるか相談している。列は遅い。でもその遅さが、祭りの時間を引き延ばしてくれる。

金魚すくいの敗北

金魚すくいの屋台を見つけた。1回300円。ポイ(紙の張った網)を1枚もらって、水面を覗き込んだ。金魚たちは僕の影を感知したのか、一斉に反対方向に泳いでいった。

ポイを水に入れた。ゆっくり、斜めに、金魚の下から——動画で見た通りの角度で。金魚の尾びれに触れた瞬間、紙が破れた。5秒だった。

「もう1回やる?」と屋台のおじさんに言われて、頷いた。2回目。今度はもっとゆっくり。金魚に近づいて、息を止めて——破れた。3秒。隣で5歳くらいの男の子が、涼しい顔で3匹すくっていた。彼のポイの角度は、僕より浅かった。そうか、浅いのか。

3回目。浅い角度を意識した。ポイを水平に近い状態で水に入れて、金魚の下にそっと差し込んで——紙がたわんで、水の重みで破れた。もう笑うしかなかった。4回目も失敗した。合計1,200円で金魚ゼロ。屋台のおじさんが最後に「練習だね」と言ってくれたのが、慰めになったのかどうかわからない。

盆踊りに巻き込まれる

金魚すくいの敗北を抱えたまま、会場の中央に行くと盆踊りが始まっていた。やぐらの上で太鼓を叩いている人がいて、そのリズムに合わせて人々が輪になって踊っている。

見ているだけのつもりだった。でも渡辺さんが「ほら、入りなさい」と腕を引っ張って、気づいたら輪の中にいた。振り付けがわからない。前の人の背中を見て真似する。手を右に出して、左に出して、回って——回る方向を間違えて、隣の人とぶつかった。「ごめんなさい」と言ったら、その人も笑っていた。

2周目あたりから、なんとなく動きがわかってきた。完璧ではないが、リズムには乗れている。太鼓の音が体に響く。低い音が胸に、高い音が耳に。汗が額から流れて、浴衣の背中が張り付く。でも不快ではなかった。踊っている間は、何も考えなくてよかった。秋の旅とは違う種類の開放感がそこにあった。

花火

午後8時、花火が始まった。最初の一発が上がった時、腹に響く振動を感じた。ドン、という音は耳から入るのではなく、体全体で受け止めるものだった。

首を上に向けて、花火を見た。きれいだった。でも10分を過ぎたあたりで、首が痛くなってきた。花火を見上げるという行為は、首に相当な負担をかける。誰もそのことを言わないのが不思議だ。

隣の人はスマホで動画を撮っていた。でもスマホの画面に映る花火は、実物の10分の1くらいのサイズで、色も音も再現できていなかった。花火は、その場にいないと受け取れないものがある。風で煙が流れてくる匂い。地面を通じて伝わる振動。火薬が弾ける瞬間の空気の揺れ。

最後の花火が消えて、拍手が起きた。帰り道は大渋滞だった。下駄で歩き続けた足の裏が痛い。帯はまたゆるんでいる。汗でベタベタで、金魚は1匹もすくえなかった。でも、来年もまた行くと思う。理由は特にない。この夜の空気を、もう一度吸いたいだけだ。

Japan Life Journey 編集チーム

日本での日々を、ひとつずつ書き留めています。旅先で見た景色、暮らしの中の小さな発見、季節の移ろい——読んだ人が「あ、わかる」と思ってくれるような記事を目指しています。